噛む力・飲み込む力が弱ってきた人が今までと同じ食事(以下、常食)をするのは誤嚥のリスクが上ってしまいます。以下の様な症状がある人は、常食からやわらかい食べ物や小さく刻まれた食事(介護食など)を食べることをオススメします。
こんな症状ありませんか?
- 水やお茶が飲みづらい
- 食事中、むせることがある
- 大きい具材が食べづらい
- 食材が硬いと噛むのが難しい
- 飲み込むのに苦労する
- 口の中が乾きやすくなった
簡単なチェックですが、上の6つの項目に1つでも当てはまる場合は、常食から「噛む力・飲み込む力が弱っている人」向けの「介護食」や「やわらか食」に食事を変更しましょう。
介護食を自宅作る時の注意点

介護食の作り方を紹介する前に、介護食を自宅で作る時の注意点を紹介していきます。
介護施設や在宅介護では食事は非常に気を遣う仕事です。もし食事が食べる人に合わなかった場合、誤嚥してしまい最悪死に至ってしまうからです。また食べることは生きることです。高齢者は噛む力、飲み込む力が低下することで食事の量が減る傾向があります。体を作る栄養が足りず、寝たきりや介護レベルが上がってしまうので注意しましょう(低栄養状態)。
高齢者にとって痩せている状態は健康寿命を短くすることに繋がります。
おすすめ記事:高齢者に多い低栄養とは?
食べる人の噛む力・飲み込む力を把握する
注意点の一つ目は「食べる人の噛む力・飲み込む力」を把握することです。記事の冒頭でも紹介したものよりも、その人の「噛む力・飲み込む力」が分かる「食事の硬さ診断」をやってみましょう。簡単な診断に答えると、その人に合った食事の硬さが分かります。
なぜ食事の硬さを確認する必要があるのか?それは、食事の硬さや飲み込みやすさが合わないと誤嚥してしまうからです。誤嚥が多いと70代の死因4位の誤嚥性肺炎のリスクが上ります。誤嚥性肺炎の死亡率は2年以内に50%。これは進行性のガンと同じくらいの致死率です。
食べ物を口から食べられなくなり、やせ細り、更に体調を崩さないためにも、その人に合った食事の硬さを知ることは大切です。
\ 食事の固さ診断はこちら /
ミキサーやブレンダーが必要なことがある
介護食を自宅で作る場合、ミキサーやブレンダーが必要になることがあります。
「噛む力・飲み込む力」がある程度まで低下していない人なら必要ない可能性もあります。ある程度とは市販の介護食の区分であるユニバーサルデザインフードの区分3「舌でつぶせる」以降だと必要になるでしょう。
介護食の硬さ、飲み込みやすさの目安があり、ユニバーサルデザインフード、スマイルケア食、学会分類など規格が複数存在しています。詳しくはこちら。舌でつぶせるに該当すると、ミキサーやブレンダーが必要なケースが出てきます。
*ユニバーサルデザインフード区分3「舌でつぶせる」の目安
噛む力の目安 | 細かくてやわらかければ食べられる | |
飲み込む力の目安 | 水やお茶が飲み込みづらいことがある | |
固さ目安 | ごはん | 全がゆ |
たまご | スクランブルエッグ | |
肉じゃが | 具材小さめでしっかり煮込んでやわらかい肉じゃが |
おすすめ記事:
・市販の介護食の区分ユニバーサルデザインフードとは?
・流動食を自宅作る方法ーブレンダー、ミキーサ何がおすすめ?
塩分に気をつけよう
もし高齢者向けに介護食を自宅で作る場合は塩分も気をつけましょう。
塩分摂り過ぎると高血圧になり動脈硬化を引き起こしやすくなります。高血圧により血管に圧力がかかると、それに耐えるように血管の壁が厚くなります。すると血液が通る道が狭くなります。これを動脈硬化と言います。動脈硬化は、脳卒中や、心筋梗塞、腎障害など様々な病気の原因です。
また、日本人の死因第1位であるガンも高血圧と関係があることが分かってきました。(国立がん研究センターがん予防・検診研究センターによる研究)
厚生労働省が作成しているガイドラインによると、男性は7.5g未満/1日。女性は6.5g未満/1日が目安です。しかし、実際には男性平均11g/1日。女性平均9.3g/1日、塩分を摂取しているそうです。日頃から減塩を心掛けていきましょう。
介護食を食べてくれないことがある
自宅で介護食を作った場合に限らず、介護施設の現場でも起きている問題です。介護食は見た目が良くなかったり、味が薄い物があったりで、今まで常食を食べていた人からしたら、美味しくない物もあります。実際に介護食Zでは市販の介護食のレビューを作っていますが、美味しくない物が多いです。
「噛む力・飲み込む力」が衰えてきていても、脳が元気な人もいます。また元気な時にグルメだった高齢者も多く、医療現場でも食事を食べてくれない問題は深刻です。
自宅で介護食を作る場合、味や見た目で食べてくれないこともあるかもしれません。ショックを受けることも多いと思いますが、めげずに作り続けていくことが必要です。もし、そういうことが起きても、あなたは頑張っています。自分を責めないでくださいね。
介護食の作り方

介護食を自宅で作る時に重要になってくる工程は、「食材を小さくする、柔らかくする、見た目を大切にする」の3点です。食べる人の「噛む地力・飲み込む力」に合わせて食材の大きさを変え、柔らかさを整え、食べたいと思ってもらえるように見た目を気にしましょう。
食材を小さくする

大きすぎる食材は介護食を必要としている人には食べづらいです。噛む力が衰えている人には噛むことが難しいですし、飲み込む力が弱い人は小さくするまで時間が掛かってしまいます。
刻みすぎると見た目がペーストに近づき、食べたいと思えなくなります。食材の大きさの目安としては、3~4cm。もしくは1~2cmくらいの2択になると思います。硬い野菜は1~2cm程度の小さめカットを心掛けましょう。
食材を柔らかくする
食材を刻んだら、次は食材を柔らかくしましょう。電子レンジと鍋を使って短い時間で食材を柔らかくするのがポイントです。電子レンジを使うことで、煮込みで柔らかくするより短い時間で食材を柔らかく出来ます。
電子レンジを使う時は、少し水をいれて600W(ワット)で2分位やるといいでしょう。その後、電子レンジで柔らかくした食材を鍋に入れて、炒めるか煮ればOK。
見た目を大切にする
介護食は茶色くなりがちです。特にペースト状になればなるほど、1色のみになります。流動食、ペースト食を作らない方は、カラフルな食材を使うことで食べる人は食べやすくなります。
色味をつける食材をまとめました。これらの食材を複数合わせることで色味が良くなります。
赤色 | にんじん、トマト、赤ピーマン(パプリカ)、赤キャベツ、鮭、鮪、カツオ、アジ、イワシ、サバ、赤貝 |
黄色 | 黄色ピーマン(パプリカ)、かぼちゃ、とうもろこし、サツマイモ、チーズ 色付けスパイス(ターメリック) |
緑 | グリーンピース、レタス、ブロッコリー、ピーマン、小松菜、ニラ、ピーマン、キウイ、ホウレン草、高菜、絹サヤ、クレ ソン、パセリ、アスパラ、きゅうり |
黒 | 黒ゴマ、ワカメ、昆布、黒コンニャク、シイタケ、シメジ、ヒジキ、キクラゲ、黒オリーブ、そば、のり、レーズン、ブルーベリー、黒豆 |
色々な食材を合わせることで栄養価も高くなります。栄養素は1つだけよりも、複数の栄養素をとることで栄養効率がアップします。色味だけではなく、栄養についても色味を気にすることは大切です。
繊維がある食材はブレンダーやフードプロセッサーを

肉類や根菜類は繊維が多くあり、介護食が必要になった人には嚙み切るのが難しい場合があります。そういう場合はフードプロセッサーやブレンダーを使い、ペースト状かペースト前くらいまでにするといいでしょう。
ブレンダーやフードプロセッサーは非常に便利で介護の現場で多く使われています。特にブレンダーは繊維のある肉類でも対応の物が多いので持っておくと便利です。ブレンダーした食材は煮込んでもいいですし、炒めても大丈夫です。
煮込む工程は水分補給と高栄養

煮込む工程は食材を柔らかくし、色々な食材を取れるので介護食を作る時は優秀です。
料理工程の中で一番栄養素が多く摂れます。ビタミン類は熱に弱く、料理工程で壊れてしまうことが多いです。また、水溶性ビタミンは水に溶け出てしまいますが、煮込み料理なら溶け出た栄養素もスープを飲むことで摂ることが出来ます。
高齢者は喉が渇きづらく、また水分を取りたがらない傾向があります。そのため脱水症状を起こしやすいのですが、煮込み料理なら水分も栄養素も摂れるので非常に高齢者に合っている料理です。更に食材も柔らかくできるので本当にオススメです(火傷に注意)
煮込みには牛乳を使うことで栄養素を補える

牛乳はカルシウムが豊富なだけではなく、他の栄養素も豊富です。高齢者は骨粗鬆症などの健康問題が出てくるのでカルシウムを摂ることをオススメします。料理の時は牛乳を入れて煮込むだけで、クリーミーに仕上がります。
また、牛乳は過熱しても栄養素が失いづらい特徴があります。骨粗鬆症を防ぐためにも牛乳を使い、カルシウム吸収効率を高めるビタミンDも併せて摂るといいでしょう。ビタミンDはきのこ類に多く含まれています。
おすすめ記事:栄養素の役割と効果
麺類は短くすればOK

介護食で麺類は食べられないと思う人もいるかもしれませんが、短くすればOKです。うどん、そば、パスタ、ラーメンなんでもOKです。塩分と食べやすさだけ考慮すれば麺類でも楽しむことができます。
実際に市販の介護食では麺類の物が販売されています。写真はけんちんうどん。
飲み込みづらい場合はとろみを追加
介護食を作るときに大切になるのがとろみです。とろみがついている料理は「噛む力・飲み込む力」が低下している人でも、飲み込みやすくして誤嚥防止になります。出来上がった料理に最後にとろみをつければ完成です。
とろみ剤は市販で販売されているので気軽に手に入れることが可能です。医療現場でも多く使われている「とろみエール」などがおすすめです。しかし、とろみをつけ過ぎると逆に喉に貼りつきやすくなってしまいます。 この喉に食塊が貼りついて残ることを「咽頭残留」といい、誤嚥の原因になるので注意が必要です。
容量用法を正しく守って使用してください。
まとめ

自宅で介護食を作る人は不安がいっぱいです。健康やお金の問題など他にも不安な要素が沢山あります。介護は長く続きます。介護する人もされる人も健康で過ごすために、自分自身を守りながら介護食を作っていきましょう。
介護食Zでは介護、介護食のお悩み相談を受け付けております。あなたの介護が少しでも楽になりますように。無料ですのでお気軽にご相談下さい。