食事を食べている時にむせやすくなった。
食べものや飲み物が喉を通りづらい。
水やお茶が飲みづらい。
その症状、実は危険かもしれません
食事中、むせることが増えてきたら注意が必要です。むせる原因はいくつかありますが、「噛む力・飲み込む力」の低下、食事形態が合っていない、喉の筋肉の低下が考えられます。この症状を放っておくと、誤嚥性肺炎になるリスクが上り、最悪死に至ります。
誤嚥性肺炎は発症すると2年以内の死亡率は50%。これは進行性のガンと同じくらいの致死率で恐ろしい病気です。むせることが増えてきたと思い始めたら今から対策をしていきましょう。
おすすめ記事:栄養素の役割と効果|介護を予防し健康寿命を伸ばすための取り方
食事がむせる・喉に通りづらい原因

食事がむせたり、喉が通りづらい原因は「噛む力・飲み込み力」の低下、喉の筋肉の低下、食事形態があっていないことが考えられます。年を重ねると喉周りの筋肉が低下することで、食べ物を噛みづらい、飲み込めないということが起こります。これにより、若い頃は飲み込めていた食事も喉を通りづらくなっていることが考えられます。
「噛む力・飲み込む力」の低下
「噛む力・飲み込む力」は年を重ねるごとに低下します。高齢者は壮年期に比べて咀嚼能力が10分の1まで低下し、特に前歯で噛む力は低下します。前歯のない人はものを噛みきることができなくなり、奥歯のない人は噛み砕けなくなる。咀嚼が十分にできないため、次第にやわらかい料理を好むようになります。
また、年を重ねることで入歯やブリッジを装着している人も多いと思いますが、そういう方も咀嚼力は以下の様に落ちてしまいます。
項 目 | 噛 む 力 |
奥歯1本の減少 | 約65%に減少 |
ブリッジ装着 | 7~8割に減少 |
部分入れ歯 | 3~4割に減少 |
総入れ歯 | 1~2割に減少 |
年を重ねれば仕方ないことですが、咀嚼能力が落ちることで口周りの筋肉が刺激されず、飲み込む力も低下します。
おすすめ記事:70代でも元気な人の特徴10選
飲み込む力の低下
飲み込む力も噛む力と同様、年を重ねるごとに低下します。むせやすくなった、喉が通りづらいは加齢による影響も強く、食べ物を送り出す嚥下圧は年齢によって低下していきます。
嚥下圧伝搬速度 | 食道入口部弛緩時間 | ||
中下咽頭 | 食道入口部 | (秒) | |
若年者 | 10.68±4.49 | 7.09±2.02 | 0.46±0.08 |
60歳代 | 9.07±4.19 | 4.39±1.47 | 0.42±0.13 |
70歳代以上 | 8.79±3.60 | 3.72±0.88 | 0.37±0.08 |
嚥下圧伝搬速度:食べ物を送り出す嚥下圧の速さ
食道入口部弛緩時間:食道部が開く速度
食道が開いて送り出す力が低下するので食べ物が詰まりやすく、喉を通りづらくなってしまいます。
おすすめ記事:高齢者がパンを誤嚥する原因とおすすめ出来ない理由
喉の筋肉の低下
食道入口の筋肉が低下して弛緩する時間が長くなることを説明しました。その他にも加齢により口周りの筋肉は低下します。そもそも食べ物を飲み込む嚥下行動は以下のような段階で行われます。
- 食べ物の認識(先行期)
- 口腔への送り込み(準備期)
- 咀嚼と食塊の形成(準備期)
- 舌根部・咽頭への送り込み(口腔期)
- 咽頭通過、食道への送り込み(咽頭期)
- 食道通過(食道期)
段階ごとに作用する筋肉が異なるのが特徴です。上で紹介した嚥下圧伝搬速度、食道入口部弛緩時間は段階5-6に当たります。
加齢により、口を開き食べ物を食べる口周りの筋肉(段階2)、咀嚼と食塊の形成はあごの筋肉(段階3)、舌根部咽頭への送り込み(段階4)は舌の筋肉など、顔周りの筋肉が特に影響され、年と共にこれらの筋肉は弱まっています。
「噛む力・飲み込む力」だけではなく、噛むまでの筋肉の低下が食べ物が通りづらい、飲み込みづらいの原因になります。
食事形態が合っていない
筋肉の低下、食べ物を送り出す速度の低下の説明をしてきました。加齢により食べる力は下がりますが、それと共に食事の形態が合っていないと食べ物が喉を通りづらくなったり、むせる確率が上がります。
あなたは食べる人に合た食事の硬さ大きさを把握していますか?食べる人に合った食事の硬さと大きさを知ることで食事中のむせや、食べ物が喉を通りづらいことを解消することが出来ます。
簡単な診断を作ったので食べる人の食事の硬さを判別してみてください。診断後は市販の介護食の区分を紹介します。
日本人の死亡原因第3位の誤嚥性肺炎を疑おう
高齢化により、肺炎による死亡原因が増えてきています。特に高齢者の場合、肺炎の7割が誤嚥性肺炎で非常に問題になっています。年齢を重ねることで筋肉が低下することを説明しましたが、誤嚥することで健康寿命を短くすることにも繋がります。
食べ物は本来、口から食道に向かいますが、筋肉の低下や食事形態が合っていないことで気管の方へ食べ物が流れてしまいます。そうすることで肺が炎症を起こし肺炎になってしまいます。
食事中むせたり、飲み込みづらさを抱えていると知らず知らずの内に誤嚥しているおそれあり。しかも、誤嚥の恐ろしい点は初めはむせていても、その内むせなくなってしまうのです。
ある調査では在宅介護を行っている75歳以上の30%が誤嚥の症状がみられたそうです。また、むせなくても誤嚥している不顕性誤嚥というのもあります。少しでも食べ物が飲み込みづらいと感じる場合は是非食事形態を変えてみるといいでしょう。
あなたに合った食事の形態を知ることが大切

加齢により「噛む力・飲み込む力」は低下します。これは仕方ない部分があるので、自分にあった食事形態を知ることが大切です。大きい食べ物が食べづらいのに大きな塊を口に入れるのは危険ですし、噛む力が低下しているのに固い野菜や繊維がある肉類も危険です。
水やお茶などが飲み込みづらいのにとろみをつけないの誤嚥を引き起こしますし、とろみがついていない食事は飲み込みづらい人には不親切です。
まずは自分がどういう食事形態でどういう状態を知って対策していくことが大切です。簡単な食事の硬さ診断はこちら
参考文献:
*別冊 高齢者のための簡単メニュー集
*誤嚥性肺炎発症にかかわる要因の検討 - 熊本リハビリテーション病院理学療法科
*嚥下のメカニズムとその障害 - 進 武幹 ・前 山 忠嗣 森川 郁郎 ・渡部 俊